INTERVIEW
fermata

女性が身体の悩みをガマンせず話せる世界へ。フェムテック先進企業「fermata」酒井裕加の志

掲載日:2023/07/20更新日:2023/07/20
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「女性が月経やセクシャルウェルネスについて語るのは恥ずかしい、そんな風潮に一石を投じたい」こう語るのが酒井裕加さん。今までタブー視されてきた、女性の健康課題への解決策を模索するfermata(フェルマータ)社で企業向けコンサルティング事業のシニアマネージャーを務める人物だ。外資系金融機関、人材営業を経て、なぜ彼女はfermataを選んだのか。そして事業にかける思いとはーー。

*フェムテックとは
フィメール+テクノロジーをかけ合わせた造語。 2012年、ドイツの月経管理アプリ『クルー』を開発した起業家イダ・ティン氏によってつくられた。彼女は資金調達に際し、投資家の理解を得られるよう、あえて「テクノロジー」という言葉を用いたとされている。

【fermataについて】
日本国内でフェムテックという言葉が知られていなかった2019年に創業。日本・アジアのフェムテック市場の創出に携わるスタートアップ。「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をビジョンに掲げ、世界中のフェムテックプロダクトを提供するECサイトの運営、国内外のフェムテック市場参入したい企業へのコンサルティング、コミュニティ運営、イベントの企画などを手掛ける。「月経まわりの課題」「産後まわりの課題」のようにカテゴリーを絞ることはせず、あらゆる課題に対して包括的に解決していくことを目指す。

一人ひとりが自分の心身を愛し、それを周りも尊重できる社会を。

外資系金融機関、人材系企業を経て、fermataへ入社されたと。入社までのストーリーから伺わせてください。

振り返ると、「性差」や「心身の健康課題」について考えることが多い社会人人生でした。

約15年前、新卒で入社した外資系証券会社では、「キャリアか家庭か」の選択をせざるを得なかった女性の先輩たちをたくさん見てきて。「なぜ女性はどちらかを選ばなければいけないのだろう」とモヤモヤしていました。

ならばシステム自体をつくり変えてしまえ。そう思い、雇用システムや働き方に愚直に一石を投じようとしている会社で、根本から変革していくことに携わりたいと思い前職の人材系企業に転職しました。非常に沢山の経験を積むことができ、有意義なキャリアを歩ませていただいていました。しかし、働く中で「男だから弱音を吐けない/辛いと言えない」という、いわゆる「男性の呪縛」に苦しむ仲間を見て、辛い思いをしているのは女性だけではなく男性も同じだと気づかされるシーンもありました。さらに、マネジメントの立場に就いてからはより一層、年齢・男女問わず何かしらの心身の悩みを抱えながら仕事をしているメンバーたちの声をたくさん聞くようになりました。企業は「生産性」とは言いますが、社員の心身の健康まではなかなか考えられていない。その現実に違和感がありました。

また、私自身は婦人系の疾患を持っていて、26歳の時に医師から「将来的に子どもを産めるかわからない」と宣告されました。幸い子どもは授かったのですが、妊娠してからも入院をしたり、安静にしなくてはならない時期があったりと一筋縄ではいかない日々。社会人人生の中で、自分自身も「性や心身の健康課題」を痛いほど突きつけられてきました。

1人1人が自分の体も心も愛することができたら。そして、周囲の人・企業もそれを尊重し大切にできたらいいのに。そう思っていた最中に出会ったのがfermataでした。

もともとインタビュー記事を通して社名は知っていました。事業内容などを調べるうちに、まさに今自分がやりたいこととリンクして。私の中でスッと1本の線が繋がったように感じ、「ぜひここで働きたい」と応募し、転職しました。

フェルマータ(プロダクト)合成

世界初フェムテック専門オンラインストア 「fermata store」では、多岐にわたるフェムテックブランドの商品を扱っている。左上から時計回りに、吸水ショーツ、月経カップ、リップスティック型のバイブレーター、骨盤底筋トレーニングキット、スマートバイブレーター、妊活サポートアイテム。

「20年、30年抱えてきたモヤモヤを初めて吐き出せました」

入社されてからはfermataの主力事業でもある「法人向けのコンサル事業」に関わられていると。具体的には、どういった仕事なのでしょうか?

フェムテックの商品・サービス開発を検討されている企業さまと向き合い、市場調査をはじめとした事業企画・立案支援から、実行支援まで行います。国内の主な顧客としては、大手企業の新規事業部の方々が中心です。

たとえば代表的な事例で言うと、大手寝具メーカーである企業さまの挑戦をご支援しています。彼らが保有するプロダクトから得られるデータと、女性の健康課題を掛け合わせることで何が生まれるのか?市場が成長する瞬間に立ち会えることが醍醐味です。

フェムテックの新規事業がどんどん起きていくためには、どういったことが重要になるのでしょう?

単にコンサルティングを行うだけではなく、先方社内でフェムテックへの理解を促進すること。そして、先方担当者が社内で事業をつくるうえでの仲間づくりまでをサポートしていくことが重要だと思います。

実際、企業さまからよく伺うお悩みに、現場の方々がどんなにフェムテックの新規事業をやりたいと思っていても、なかなか社内での決裁が通らないというものがあります。

なぜ決裁が通らないのか。様々な理由はありますが、まだまだ決裁者の方々に生物学的男性が多く、女性の健康課題を自分ごと化しにくいという点も一因としてあると思います。

そこで私たちは、必要があれば、広く従業員さま向けに「フェムテックとは?」「女性の体の変化に伴う症状について」といったテーマで知識挿入からさせていただくこともあります。

特に私がお伝えするなかで大事にしているのが、「平等と公平」の考え方です。例えば球場で野球が見えない時、同じ高さの踏み台を人数分だけ用意するのは、「平等」だと思います。一方で、観客の身長も年齢も様々。踏み台があれば大人はよりよく見えるようになっても、 小さい子どもは見えないまま。これを「公平」に導くには、子どもには踏み台を2つ用意するといったアプローチが必要になりますよね。

社会においても、同様のことが言えると思います。今までの制度やルールにとらわれることなく、これからの時代に求められるサポートをプラスアルファでつくっていく必要がある。こうした内容を、1社1社に説明させていただいています。

一方的な要望だけを伝えるのではなく、歩み寄りを大切にしながら会話でとき解していく。正直、反応は様々です。ただ、「確かにそうですね」と受け止めてくださる方も多いです。少しずつ「女性が働きやすくなることは社会全体にとってプラスなことである」かつ、「フェムテック領域への事業進出はビジネスチャンスでもある」という機運を事業責任者の方々と一緒に作っていければと思っています。

実際働かれるなかでは、どんな時に「この仕事をしていてよかった」と感じますか?

企業さま、ユーザーさまからの感謝の言葉をいただくときですね。

先方社内の仲間づくりからサポートさせていただいた企業さまから「fermataさんがいたから、最後まで一緒に頑張ろうと思えました」「この実績をきっかけに、1つ新たな事業として進むかもしれません」といったお声をいただいて。この1歩が、もしかしたら10年後の大きな事業につながっているかもしれない。想像すると私まで楽しみになります。

また、企業さまのコンサルティングを行うにあたり、市場調査の一環としてインタビューを行ったときに、あるユーザーさまからもらった言葉が忘れられなくて。

「こんなことを今まで話せなかった。20年、30年抱えてきたモヤモヤを吐き出せただけでもすごく心が軽くなりました」と。

そのたった一人の「我慢せずに話してもいいんだ」と思えた体験から、輪が広がっていくこともあると思うんです。もしその方がお友達やご家族とも、自身の身体の悩みについて話してみる勇気が持てたとしたら。1人、また1人と、よい連鎖が生まれていくのではないかと思います。

フェルマータ01

他にも、各社の人事部からの相談にものっているfermata。酒井さんは支援の経緯をこう語ってくれた。「先方の担当者の方からは「制度は充実しているものの女性活躍の文脈で考えるといまいち核心をついていない」とご相談いただきました。実際、女性社員の方にお話を伺うと「生理休暇というネーミングでは男性上司に相談しづらい」 などリアルな声が浮彫に。そこから見えた課題をもとに、制度面での変更、社内でフェムテックについて学ぶイベントの開催、当社で取り扱うプロダクトをトライアルしてみてもらったりしました。さらに、女性従業員のみなさんの悩みに向き合ったことをきっかけに、「世の中の多くの人も同じように悩んでいるのではないか」と外にも目を向けられるようになったとのこと。自社のサービスを活用して、フェムテック領域でどんな新規事業ができるのか。少しずつ検討を始めていただいているフェーズです」

「フェムテック」という言葉が不要な社会へ

今後、fermataとして実現したい状態、足下での課題があれば教えてください。

当面は、女性の健康領域の市場化に注力していく方針です。制度や消費者のマインドなど、急いで変えられない面もありますので、多方面に目を配ってじっくりと向き合う必要があります。

実際にモノやサービスを使うエンドユーザーや、それを生み出す企業さまはもちろん、省庁、医療関係者、大学・研究機関、商社、小売店など、様々なステークホルダーを巻き込みながら大きなインパクトを生みたいですね。

また、事業を行うプレーヤー同士のコミュニティ形成も重要です。近年、参入企業が増えてきたとはいえ、まだまだどの企業さまも先駆者であることには変わりありません。「蹴落とし蹴落とされ」ではなく、「同志」として共にフェムテック市場を創っていこうという空気感を醸成していきたい。fermataがプラットフォーマーのようになって率先して取り組んでいかなければならないと考えています。

フェムテック領域の市場形成ができた先には、「女性だけでなく、誰もが生きやすい世界」が待っています。社会の一員である女性たちが生きやすくなれば、社会全体のQOLもきっと上がるはずです。理想は、いつか「フェムテック」という言葉自体が不要な社会になること。性別問わず、当たり前のように自分の心身を愛することができる社会。そんな世界になることを願っています。

フェルマータ(ステークホルダー)

「薬事関連で性に関する器具に対応するカテゴリーや用語の新設を求めるなど、国への政策提言を行うこともあります*。また、医療機関にテスティングしていただき、医療的に見て日本人女性の健康課題を解決しうるものなのか。効果・効能を実証いただき、医師のお墨付きを得ることも必要です。市場に流通させていく上では、商品の良さを理解し取り扱ってくれる小売業者の方々、商社の方々との連携が欠かせません」
*2023年、子宮口キャップ、骨盤底筋訓練器具、家庭用膣洗浄スポンジの三つが医療機器用語として厚労省により新設された。
https://senken.co.jp/posts/fermata-230703

市場をつくる主体者として、見たい景色がある。

最後に、酒井さんから見て、今fermataで働く魅力とはどんな点だと思いますか?

「フェムテック市場をつくる」というアーリーステージに関わることができる。これまでなかった市場を形成していくチャンスは、そうあるわけではないと思います。

同時に、新たな市場をつくるということは、前例がない、答えのない領域に挑んでいくことでもある。実際、fermataでは毎日のように新しいことが起きます。私自身、15年ほど社会人人生を送ってきて、それなりに経験を積んできた自負はありますが、まだまだ「無力だな…」と痛感する日々。でも、いつまでも新しい挑戦をできる環境は、私にとっては最高にエキサイティングです。

いつになったら「市場ができた」といえる状態になるかは正直わかりません。5年後には実現しているかもしれないし、もしかしたら100年後もまだまだ努力が必要かもしれない。ただ、ここからフェムテック市場がどう変わっていくのか。ピンク色になるのか、はたまた緑色になるのか。変わっていく景色を、その瞬間、瞬間で、市場をつくる主体者として見つめていたい。私自身、ワクワクしながらこれからも働いていくんだと思います。

fermata店舗画像

活躍に重要なスキルは「アンラーンすること」と酒井さんは語る。「代表の杉本や近藤も、概念やこれまでの自分の経験や常識に囚われない人たち。まずは、こんなモノ・価値観もあるということを受け入れて、そこから深化させていく。そういった考え方ができる方と働けると嬉しいですね」

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